2005年2月17日木曜日

マーク・ダナヒューにみるレーシングドライバーとインテリジェンス

アメリカ人で、ちょっと旧いカーレース好きなら、誰しも1冊持っている隠れたベストセラーがある。Mark Donohueの著書"The Unfair Advantage"がそれだ。

Markについて簡単に記しておくと、6-70年代に主にアメリカで活躍したレーシングドライバーで、SUNOCOカラーに塗られたペンスキーのローラT70やフェラーリ512Mにカマロ、あるいはポルシェ917-30で大活躍した。また、1972年にはインディー500のウィナーとなったが、不幸にも、1975年F1オーストリアGPのウォームアップセッションでクラッシュし、運悪く普通は抜けることのないキャッチネットの支柱が頭部に当たった結果、数日後急に帰らぬ人となってしまった。この本は、彼がレースから半ばリタイアしていた1974年に、レーシングドライバーとしての半生を振り返る形で、各車との関わり方を記したものである。長らく絶版だったが2000年に再販され、再び脚光を集めたことも記憶に新しい。

彼と彼の著書がなぜこれまでに支持されているかというと、彼のレースに対するアプローチが、画期的にインテリジェントだったことによる。彼はブラウン大卒のエンジニアであり、フリクションサークル理論(タイアの能力を最大限使う上の理論。各タイアにかかる荷重×前後左右方向のタイアグリップのベクトル総和の範囲内で、コーナリングとブレーキング/アクセレレーションをクロスオーバーさせるドライビングスタイル)など、彼が独自に編み出した理論や開発手法は、今では常識となっているものも多い。その意味で、レーシングドライバーはみな彼に借りがあるのだ。



例として、彼はシャシーのセットアップを重視した。・・・なんて当たり前のことだが、60年代のレースなんて、本当にいいかげんなもので、ほとんど何も調整なしといって構わない状況だった。クルマに難癖をつけるのは、男らしくないという価値観だったのだから。

そのような中、彼は新しくドライブすることになるレーシングカーを、ペンスキーが所有するスキッドパッドに必ず持ち出し、あらゆるスプリングレートやダンパーセット、車高やアライメントを試しながら、大小の定常円旋回のバランスを最適化していた。

インテリジェンスというには、極めて単純な理論の実践かも知れないが、このように彼は自分の頭で考えた理論を、自分の手を汚して実験し、結果に結びつけてきたのだ。それに比べると、今の我々はいつも参考書を探し、定石をヒトに聞くことが多くないか。

本書は、アメリカ人の文章らしく平板で、行間を読むことはできないし、めくるめく体験記というわけでもない。しかし、文字通りに語られる内容が我々自身とクルマとの関わり方にヒントをあたえてくれるという点で、そのようなことに興味がある方々にはお勧めしたいと思う。全文英語だけど。


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