2005年9月18日日曜日

Remembering Sep.'96 Arizona and Don

Bondurantgp 若いうちから贅沢をするもんじゃないという言葉は、今や聞くこともまれだが、アリゾナで会ったDonとのたわいもない会話ほどこの言葉を身につまされたものはなかった。
もう9年も前の96年の9月のこと、僕はアリゾナ州フェニックス郊外にいた。4日間コースのレーシングスクールに参加するために、東京からご苦労にも大韓のエコノミーで飛んできたのだ。
このスクールは、F1にも乗ったBob Bondurantが運営しているもので、トータル4日間のコ-スの2日半はSareenチューンのFord Mustang 3.8GT、残り1日半はCrossleのFormula Fordでみっちり走り込まされた。日中40度近い炎天下の中、1日3時間以上のトラックタイムが4日連続。20分ずつのスティントの合間には、とにかく水を飲まされた。これほどにドライビングに集中したのは金輪際なかったが、案の定4日後のスーツは乾いた汗で塩をまぶしたように見事に真っ白になった。最終日にインストラクターが"very smooth and I give you my credit for FFord"と言ってくれたことは、今も心の支えだ。
このように"4 Day Grand Prix Course"は最もインテンシヴなコースだが、同級生が僕のほかに2人いた。ひとりはノースキャロライナ在住で911乗りのMark、もう一人がテネシー在住のDon(ピンぼけ写真右)である。



50代前半と思しきDonは、ちょっとダイエットが必要な、ある意味普通のオッサン。FedExの機長で、いつもはDC-10を飛ばしているという。離婚して独身だったが、初めてホテルのロビーで会った時は、40代前半ぐらいの女性と暫しの別れを惜しんでいた。50過ぎのオッサンが「ガールフレンドがさぁ・・」と口にするのは、日本人の僕らには奇妙に聞こえるが、きっと彼らはティーンのころからの習い性なのだろう。実際、そのころのアメリカは、忘れ得ぬ輝ける時代だったはずだ。果たして、スクール2日目の夕方、ホテルのジャグジーで彼がそのころの昔話をしてくれた。もちろんクルマの話である。
彼がハイスクールに入ってすぐのころ、初めて手に入れたのはMG TCだった。それからすぐTDに替わり、その後はMG A、さらにTwincamとあわせて2台同時に持っていたんだ。SUの調整なんて、庭のホースを切ってヴェンチュリに突っ込んで、左右の音が一緒に聞こえるように調整するだけ。簡単だね、って屈託なく笑う。ウィンクするたび、眼鏡の向こうの優しい瞳が一瞬隠れる。
じゃあ、そんなDonは、今は何に乗っているんだろう。今はもうMGは持ってないの?でも今だったらJaguarかな?僕の質問に、彼は誇らしげにこう答える。いやいや、今はCamaroのSSだよ。いいクルマだね。スリック履いてサーキットに出るんだ。彼はやっぱり屈託なく笑っている。
若いうちにMGをさんざん乗り潰した挙句が、何で今はカマロなんだよ。いったいどうなってしまったんだろう。もちろん”Export or Die”時代のMGなんて、現在のカマロの価値もない安物だったろうし、第一カマロ1台が彼の暮らしすべてを代弁するわけでもないが、FedExの機長なら、もっといいクルマを持っていてもバチは当たらないはずだ。次の言葉を探している間に、これはアメリカの経済力が相対的沈下したことによるものではないかな、と思いはじめていた。それと同時に、(当時の)僕がAlfaを2台持っていると言ってしまったことに、ドキドキしていた。
今、日本に住む僕らは、半ば沈没しつつある国家経済とは不釣合いな贅沢に溺れているのではないか。別に僕は悲観主義者ではないが、こういう時代がいつまでも続くかないとすると、自分の身につかない贅沢はやはり慎んでおいた方がいいかな、と思う。
少なくとも、Donの昔話には、そう思わせるだけの説得力があった。・・・その後僕は結局FFordを買うなど散財し放題だから、全然説得力はないけど。


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