2012年4月14日土曜日

isn't it a fake??

speedsix

僕は世界一速いトラックに全く興味はないのだが、この一件は無視できないので採り上げることにする。

"Judge rules £425,000 1930s Bentley is NOT a fake despite only original feature being its chassis" (控訴院、シャシーの一部以外はオリジナルでない42万5千ポンド相当のヴィンテージベントレーがフェイクでないと判決)

●事の経緯
・2007年にMercedes Brewer(US出身の女性弁護士)はBentley Speed SixをStanley Mann(Vintage Bentleyのスペシャリスト)から£425,000で購入。
・が、18ヵ月後に支払返済に窮して、専門家による評価の上で売却することを決意。ところが友人の元Bonham社員は£300,000と評価。エンジンは元来Speed Sixではなく、さらにオリジナルでSpeed Sixだったのはフレームのフロント部分のみだったため。
・これを受けて、Brewerは融資元のFortisに支払停止を要請したところ、Fortisは未払分回収のために融資契約を破棄してSpeed Sixを差し押さえ(その後£425,000でMannに買い戻させた)。
・これを受けてBrewerはMannとFortisを提訴;Mannは契約違反のかどで。
・第1審(2010/10月)はMannが敗訴し、控訴。
・ところが2012/3の控訴審で、Stanley Mannが逆転勝訴。購入前にエンジンはオリジナルSpeed Sixでないことを説明済との証言が認められた模様。
●ちょっとオリジナルパーツが付いてればfakeじゃない?
大半のメディアでは、物もわからずに買ったアメリカ女性(←重要な偏見)のゴネ得が覆ったと言うトーンだったが、上記リンク先のDailyMailだけは違う本質をちゃんと押さえていた。
つまりこの判決をもって、わずか少しでもオリジナルのパーツが含まれていれば、その固体はfakeでないということが法的に担保されてしまったというポイントだ。
Stanley Mann自身も裁判後に「こういう旧いクルマはある時点で全てのパーツを交換せざるを得ないという問題がある」(のだからしょうがない)と言い切っている。
そんなのってアリ???このSpeed Sixなんて、消耗品交換をはるかに超えたhotchpotcheではないか。
さらにいうと、Brewer氏の旦那のPeterは長年のVintageBentleyのエンスージアストとのことで、決して無知でもなさそうだ。
ちなみにStanley Mannは、その後の価格上昇もあって現車を£675,000で売却済。

●これからもfakeし放題?
極論かもしれないが、この判例をそのままなぞると、1台のオリジナルを切り刻んで100台にしても全て法的にはfakeではないことになる(実際のappraiserによる評価はともかく)。
これは実話らしいけど、イタリアにSZをレストアに出したら、横でもう1台クリソツを作って大半のオリジナルパーツをそっちに移されてしまったという場合、どっちがオリジナルか?・・は法的には50/50になりかねない。
そもそも、いろいろなヒトの手を経てきていて、なおかつドキュメントが連続的に残っていない場合、売り手と買い手の間の情報非対称性が大きいが、この判例がまかり通れば、売り手の虚偽の申告さえ法的に問われないことになりかねない。

つまり、この判決を生温かい目で傍観するだけではなく、僕らのような非業界側から反対の声を挙げななければいけないのではないか。
もはやイギリスのメディアもディーラーに飼いならされているから、せいぜい勝ち負けを述べる程度で、あとはreader'sでのガス抜きがせいぜいだろう。まして日本の雑誌はこのブログを転記するぐらいだろうし・・(明らかなパクりや、自らそうおっしゃった自称ジャーナリストもいましたねw)

だって、今回の判決は、この手のアンティーク業界には"monumental"なものだったが、彼らにかなり偏って優位の判決が下ったんだから。
#ましてや、日本はfakeの最終集積地ですからね。

みなさん、どう思われますか?

3 件のコメント:

  1. 万全なる(完全は極めて困難だろうから)骨格と心臓に、外様の他臓器を移植するのであれば「オリジナル」と見ても良いと思います。
    今回の例はオリジナルがフレームのフロントのみだというのであれば「良く出来た贋作」かなぁ。
    でも心臓と骨格を分離して2体創った際には心臓積んだ方が重視される例もありましたね。馬蹄なんぞはその辺無法地帯ですし。
    ・・・と、書いてみましたが
    「こういう買い物はリスク承知でしょうに。あとからゴチャゴチャ云わない!」ってコトで。

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  2. なかなか一般論に持ち込むのは難しいですが、判断基準はおっしゃるとおりと思います。馬蹄の場合はBCナンバーのおかげで、積極的にセミfakeを楽しめる環境下ですね(アルゼンチン製はともかく)。
    今回の一件が、どういう情報開示のもとで売買されたのかはよくわかりませんが、そこに不備や虚偽があれば、僕はあとから不服申し立てはしかるべきと思いますよ。売り手が虚偽申告が容易なのに、買い手側は不利ですからね。

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  3. なるほど、仰る通り。ただ今回、買い手は旦那さんに何も聞かなかったのかな?と疑問。
    確かに桁が大きいから「授業料」と云うには些か・・・とは思いますが、ソレを含めて。
    判決についての p 氏の考えについてももっともでありますし、売り手は他に1.5倍で売却出来たコトにも「何かおかしい」とは思います。
    自分の立ち位置が半端なので、コメントも半端になっちゃいました、失礼。

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